『普通』を渇望して、『普通』にはなれなくて――真理と向き合う現代詩
『ダルちゃん 1巻』はるな 檸檬(著)単行本(小学館)
【あらすじ】
私を
真に幸福に
するのは
誰なのだろう
友人、恋人、そして創作。
出会いを重ねて、わたしはわたしになっていく。
「普通」とは、「居場所」とはを問う圧巻の物語、完結編。
(帯文より引用)
【みどころ】
『書いてる…って言うのは まだ少し恥ずかしい』
経理に新しく入ってきた優秀なヒロセさん。
しかし優秀ゆえか自分のペースで仕事をすすめ、そのスピードやクオリティについていけない周囲の反発に遭い…多大な仕事のミスを一手に引き受ける事態に。
サトウさんの貸してくれた詩集の、正直な気持ちで躍動している言葉たちに感化されていたダルちゃんは、
周囲に同調して見捨てるわけでもなく、かといって残業代目的でもなく、
自分の中に湧く、仕事をまっとうするという正直な気持ちでヒロセさんを手伝う。
金曜夜から土曜の朝までかかった二人。
ヒロセさんの足りない部分、魅力的な部分を知ったダルちゃんはそのまま、ヒロセさんの家に行き、
ダルダル星人の体を見られた後でも拒絶しない彼と、通じ合ってしまう。
初めて誰かと付き合うことになったダルちゃん。
詩にも興味を抱き、書き始めているがまだそれは彼には内緒。
『結婚しようって』
詩を書き上げたダルちゃん。
彼女に詩というものを教えてくれた、サトウさんにそれを見せることに。
詩の感性を讃えてくれたと同時に、ヒロセさんと付き合っていることがそれとなく伝わってしまう。
しかしサトウさんにも実はよい変化が。
あの立ち止まった恋愛から、再び動き出そうとしてるサトウさんの幸福を、心から喜ぶダルちゃん。
サトウさん、今度こそ幸せになって欲しい…!
『その先にあるものが見たいんです』
サトウさんの勧めがあったこともあり、幾つか書いた詩の中から、公募に出してみたところなんと!
募集サイトで【今月の詩】枠で掲載が決定!
才能を見いだされ発芽していくと同時に、ダルちゃんの中に湧き上がる、強い無力感。
もっともっといい詩を書くためには、今よりもっと勉強して、掘り下げて、自分の感情をさらけ出さないといけない。
”ほんとうのこと”が書いてある詩と向き合う為にも、自分に足りないものを補ってもっと打ち込みたいと決意するダルちゃん。
誰のためでもない、自分のために…。
『人生を他人にさらして そうやって生きていく人間じゃない』
自分のなかの”すきなもの”、”かがやくもの”を見つけたと思ったが、その光は、自分以外の人には眩しすぎて…。
大切な人を傷つけてしまった。
ダルちゃんがダルちゃんらしく生きることは、同時に誰かに我慢をさせてしまうことなのかも知れない。
自分とのことを詩に書かれた知ったヒロセさんは、
『詩は書いていいが、自分のことは明らかにしないで』と訴える。
顔も知らない誰かの手に渡った自分の人生が、
覗き見されたり話題に出されるのは気分の良いことじゃない
と。
『普通じゃないから 幸せになれない』
ダルちゃんとのズレを感じてしまったヒロセさん。
自分を偽ってでも傍にいたいダルちゃんは、それでも仲を繋ぎ止めようとしてしまう。
サトウさんの恋人、コウダさんはダルダル星人だった。
人目のあるところでもお構いなしに擬態を解く。
【普通】じゃないのに、
【堂々として】いるコウダさん。
いつも人目を気にして【まとも】に見えるように取り繕ってきたダルちゃんは、
他に生きる術を知らないし、
誰かに受け入れられる以外の幸せを知らない。
…
初めての恋
心が燃え上がる、創作との出会い
友情
本当の幸福は、何処にある?
【感想】
1巻を読んですぐに続きが気になり、即買いに行きました笑
2巻の平積みが多かったので、割と1巻だけ読んで止まっている人が多いのかな?という印象。
続刊は売れにくい傾向がありますからね、それは仕方なし。
ダルちゃんに親しい人が出来てきて人間らしくなってきて、
自分の才能みたいなものを見つけてからののめり込み&加速具合が見ていて応援したくなる半面、
どこかで挫折がないか、ダルちゃんの変化に対応出来ない人が出るんじゃないか、
とハラハラした気持ちにもなっていましたが案の定でした。
『大切な人を失うくらいなら自分らしく生きられなくていい』
これはダルちゃんのように分かりやすい才能を持った方でなくとも、感じた事がある女性は多いのではないでしょうか。
パートナーのために仕事や結婚や子どものことで悩むのは女性側が多いですしね。
自分らしく生きることを諦めれば幸せになれるわけでも、
幸せにしてくれる人が現れるわけでもなくて。
この本は何度読んでも心が揺さぶられるほど、強い想いを感じます。
本当に幸せになる方法
について考えさせられます。
今日もお読みいただきありがとうございました!
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