人間関係の『正解さがし』をするあなたもきっとダルちゃん。
『ダルちゃん 1巻』はるな 檸檬(著)単行本(小学館)
【あらすじ】
「ふつうの人」になりたくて今日もわたしは擬態する
ダルちゃんは普通じゃない。
だから
社会のルールを
一生懸命覚えて、
居場所を探す。
これはきっと、
「わたしたち」の物語。
(帯文より引用)
【みどころ】
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『ダル山ダル美 ダルちゃんです』
24歳の派遣社員、丸山成美。
何の変哲もない若いOLかと思いきや、彼女はダルダル星の住人、ダルちゃん。
人間の姿・生活に馴染むように擬態する異星人。
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『ちゃーんと普通の人間に見えるように惜しみない努力を続けておるのです』
ダルダル星人のダルちゃんが人間に擬態するまで、積み重ねる努力の数々。
人間にだってそこそこ苦痛だ笑
女は女でいることを望んでいるのか強要されているのか考えてしまうシーン。
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『この人間の世界には そぐわないのだ と』
なぜ人間のフリをしているのか?
何の目的で?
ダルダル星には帰らないの?
そんな疑問が読者の首をもたげてくるが、ダルちゃん自身もよく分からないらしい笑
ダルちゃんの両親は極めて普通の人間。
兄と姉がおり、三番目の子として生まれて来たがなぜかダルダル星人だった。。
小学校以降の彼女は、人間社会のルールに乗ることが誠に難しくつらく、
ほどなくして自分がこの人間の世界にはそぐわない存在であると悟る。
そして、
まわりの人間のマネをしていればおかしいと思われないはず
と気づき、
普通の女の子の見える容姿、
振舞いかたを身に着けるに至る。
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『こういう感じでいれば この人はどんどん上機嫌になる』
初めは緊張して失敗ばかりしていた会社にも慣れ、
役割とルールにのっとり居場所を確保し続けるダルちゃん。
やるべきことが分かる/決まっている
ということはダルちゃんを安心させた。
唯一苦手なのは飲み会。
何が正解か、何をすれば良いかイマイチ分かっていなかったダルちゃんだけど、
いつもの通り周りの女の子のリアクションをマネて人の話を聞いていく。
『自分の本当の感情』が何処にいってしまったかを考えずに、目の前の人を気持ちよくさせていくダルちゃんの振る舞いは、
…本当に正解?
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『あなたの尊厳を踏みにじる奴らに あんな風に笑かけちゃダメだよ』
営業のスギタさんは、ダルちゃんを軽んじ失礼な言葉も次々と口にしていたけれど、
自分の役割・周りから見ておかしくないかばかりに気を取られていたダルちゃんはそんな彼の言葉をヘラヘラした顔で聞き続けてしまう。
二人のやり取りを見ていた経理のサトウさん。
ダルちゃんに声を掛けて一緒に飲み会を抜け出す。
訳が分からないダルちゃんに彼女は、
『あなたを侮辱するようなことを山のように言ってたよ』
『あんな風に笑って話を聞くのはあいつを肯定することになる』
と、ダルちゃんに自分を軽く扱って欲しくないと訴える。
性格の良くない相手に自分を許すこと・悪意ある言葉を受け入れることは、関係を支配させることと同じと諭す。
まわりと馴染むようにと生きてきたダルちゃん、『自分を大事にする方法』というスキルは彼女の中にはなかった。
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『あんな目で私のことを見るなんて 間違いなんだってわからせなくちゃ』
酷い言葉を投げ掛けてきたスギタさんより、
突然説教じみた言葉を投げ掛けてきたサトウさんを嫌いになったダルちゃん。
あの場はあれで良かったはずなのに、
ほとんど話したことも無いようなサトウさんにアレコレ言われなきゃならないのか?
サトウさんが否定していたスギタさんを好きになろうと。
そうすれば、自分の方が正しかった、勝ったということになる、と…。
言い表しようのない惨めな感情が、
ダルちゃんを間違った方向に連れて行ってしまう。
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『自分の本当の気持ちを知るって 実は一番難しいことなんじゃないかって思うのよ』
ダルちゃんの行動を戒めたのは、
サトウさんにも身に覚えがあったから。
もう二度と、取り返せないほどの大事なものを失った過去のあるサトウさん。
自分で自分の気持ちに蓋をしてはだまし続けた人生、ダルちゃんには同じように歩んで欲しくなくて…との思いからあの言葉と行動に出てしまったと、謝罪してくれた。
サトウさんのつらい過去にダルちゃんは擬態を維持出来ず、、、
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『後任のヒロセくんです』
恋のゆくえから少し正直に生きるようになったダルちゃん。
しかし同時に傷も負ってしまった経緯から、少し男性に苦手意識を感じるように。
そんな矢先、経理で良くしてくれた女性社員さんが産休に入ることに。
後任でやってきたのは不器用で生真面目、脚が悪いヒロセさん。
擬態が通用する相手なのか、苦手な人がいなかったダルちゃんへの試練は増える。
自分を大事にするってどうやるの?
自分の意見を持つってどうやるの?
自分を大事にしつつ周囲ともうまくやる術とは?
…
また、上手く生きられるかなぁ?
【感想】
新井賞 をご存知でしょうか?
TVで紹介されていたのをきっかけに、新井見枝香さんの選考する賞を知りました。
従来の文学賞以上に影響力を持ち、時には先刻の受賞作品よりも売れることすらあるという、異色の賞、三省堂書店の社員さんでありながら、その『良い本』を見つけ出す力は作家や著名人も認める程だとか。
(TVでは『火花』著者のピース又吉さんがそのようにコメントされていました)
…と、ここまで紹介されて、受賞した作品が気にならないわけがない!笑
ダルちゃん、正直絵柄があまり得意なタイプではないのですが、ここ最近の目標として、
- 食わず嫌いしない
- 取り敢えず手を出す
- 手を出したあとに考える
などなどを掲げておりまして、勇気を出して買ってみました。
ダルちゃん、『社会に溶け込む意義』・『生きる難しさ』をその独特の見た目とダルダル星人の視点から語ってくれていますが、この悩みはまさに人間のそれ。
人から求められる人間像って、性別・世代を超えてありますよね。
人と違っていたら/その人らしくなかったら、もれなく周囲が矯正してくれる感じまでその通り。
なぜこの世はこんなに生きにくいのでしょうか?
というはるな檸檬さんなりの言葉とテイストで語ってくれるダルちゃんの胸中が、ハードルに感じられていた絵も易く飛び越えて、私の胸に降り注いできました。
あったかくて寂しい雰囲気を持つダルちゃん、自分の人生を見つめたい人におススメかも知れません。
人からバカにされたり笑われたり、軽く扱われたり、そんな周囲に合わせて自分の本心が分からなくなったり、、、
少しでも思い当たる人…や、かつてそうして擬態して生きてきた人にはかなり刺さると思います。
今日もお読みいただきありがとうございました!
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