患者への医療を”確実なもの”にする大事な架け橋ーー薬剤師の本格医療マンガ!

2019-02-03

『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1巻』 荒井 ママレ (著), 富野 浩充 (医療原案) ゼノンコミックス(徳間書店)

 

【あらすじ】

あなたの毎日を守る

小さな小さな

”最後の砦”。

 

医師の出した処方箋に

唯一、異議を唱えられる職業

薬剤師

 

病院薬剤師の葵みどりは、

患者の”当たり前”の生活のため

ときに医師と、ときに患者と戦い

院内を駆け回るのだったーー。

(裏表紙より引用)

 

 

【みどころ】

荒井 ママレ:アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1巻(徳間書店)

『”薬を安全に患者さんに届けること”が一番の存在理由』

 

主人公の葵みどり、26歳。

全国に2割と言われる、病院勤務の薬剤師(薬剤部)に就いて2年目のアツい若手。

 

薬剤師のイメージと言えばざっくりと、

”薬局の窓口で薬を渡してくれる人たち”

 

もっと具体的には、

  • 千種類以上の医薬品の管理
  • 医師の処方箋に基づいた調剤
  • 患者さんへの提供

だそう。

しかし中には処方箋が間違っている/疑問点があることも多く、疑義照会という、処方もとである医師に疑問を確認する作業も含まれる。

 

薬剤師は、医師に異議を唱えられる唯一の存在だそう。

しかしこの疑義照会とっても重要な仕事だが、医師には煙たがられることも多い。

医師のように患者さんと直接接するわけではないし、看護師のように頼られることも少ない薬剤師は日陰者(他科との結びつきも弱い病院ではステージが下)では…と憂鬱になるみどり。

 

荒井 ママレ:アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1巻(徳間書店)

『何で薬剤師が首つっこんでくるんだよ!』

 

みどりが院内で出会ったのは整形外科で治療する、古賀治郎さん

庭師の仕事中に、脚立から落ちて腰骨にヒビが入ったとのこと。

あと3日後には退院と医師に言われ本人もそれを期待しているが、どう見ても調子が悪そう…。

 

薬が合っていないなどの観点からも、話を聞いたり治療を再確認する事も出来るが…と提案するが、本人は断固拒否!

そもそも医師でもない薬剤師に頼ることなんかない!と突っぱねるばかり( ;∀;)

 

荒井 ママレ:アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1巻(徳間書店)

『仕事が生き甲斐の人だからーー』

 

古賀さんの奥さんいわく、

本人は強がっているがやはり具合は良くなさそうとのこと。

骨折の前は喘息を発症した事もあり、仕事が生き甲斐の旦那さんにとって、体が今まで通りに動かせなくなることを受け入れるには時間がかかったのだとか。

 

仕事復帰を焦って、入院後も不調を隠していた?と推測する。

本人と医師の間でのみ話が進み、家族として感じる不安や疑問を解消する場がない不安を一人で抱えていた奥さん。

薬剤師としての立場から、どこまでどう踏み込むべきか惑うみどり。

疑義照会をかけたことで医師から疎まれたリアクションも頭をかすめるが、自分の中で引っかかることを明らかに、そして患者家族の為にもーーー

 

荒井 ママレ:アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1巻(徳間書店)

『怪我が治って終わりじゃないでしょう!』

 

古賀さんを治療する形成外科の医師に、異変をもっと気にかけろ、疑わしい症状について証拠を集めるためにも血液検査をしろ、と直談判する手段に出てしまう!

薬剤師の分際で(?)医師に意見するなんてと相手激昂させるが、言っている事は間違ってはいない。

現状適切な治療をしていると医師は言うが異変を放置すればいずれまた病院に戻ってくる事になるし、何より退院後も今まで通りの生活を送れないと意味が無い(今が本当に最善の治療なのか?)と必死で訴える。

薬剤師だろうと、担当科が違っていようと、薬を届ける患者に寄り添っていけない理由はない。

 

ーーー彼女の熱意に、医師の反応は?

 

荒井 ママレ:アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1巻(徳間書店)

『命を直接救うことはできない』

 

一日に全国で処理される処方箋は、およそ220万枚

内、3%の6万枚に疑義照会がかけられ、その7割は処方変更されるという。

 

命を直接救う事は出来ないけれど、

薬剤師の目で見て、変更すべき薬の処方によって、医療をより確実なものにできるはず。

それが薬剤師の重要な役割なんじゃないだろうか。

 

荒井 ママレ:アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1巻(徳間書店)

 

子どもがマイコプラズマ感染症に罹った山口さんは、デザイン会社に勤める時短勤務のシングルマザー。

薬を嫌がり病気が思うように安定せず、病児保育も全滅のため休み続き…。

作業時間を確保できないことから仕事が滞り、自分の案件だった仕事も後輩に割り振られてしまい身も心も疲れ果てていた。

 

キラキラしたワーママ

キラキラした専業主婦

 

そのどっちでもない、そのどっちにもなれない自分、画面の向こうに映る”充実していそう”な女性たちとの生活の落差に、必死に自分を保っていた。

 

荒井 ママレ:アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1巻(徳間書店)

『頑張って…ないように見える?』

 

外来を訪れるも、一本調子・流れ作業の診察にかえってうんざりしてしまう山口さん。

薬が病気に効けば自分も早く思うように動けるのに…というイライラと疲労が募り医師の何気ない言葉さえ引っ掛かってしまうほどに。

 

子どもの不調だけを診ていれば病気が良くなるかというと、それを支える家族の悩みや気がかりも解消していくのが大事なのであって…。

薬が飲めない=他の選択肢はないので頑張って飲んで

と言われても、これ以上どう頑張れば?という無力感にも襲われてしまうのも無理はない。

 

荒井 ママレ:アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1巻(徳間書店)

『この子が薬を嫌がって飲んでくれなくて…』

 

職場はおろか、医師にさえ受け取ってもらえない自分の悩みや心のうち。

みどりが声を掛けたことによりついこぼれてしまう。

前回薬を受け取ったときよりもやつれている山口さんを見て、彼女の訴えを聞いて、薬を嫌がる子どもへの対処法を教えるみどり。

 

目の前の人の背負っている重たい荷物を、1つでも軽くできたら。

人生を劇的に変える魔法は存在しないかも知れないけれど、誰かとの関りが自分の心を軽くすることがあるかも知れない。

 

薬の副作用をきちんと調べて、調べて出てきた方法で試すくらい真面目に頑張ってきた山口さんを、少しでも救う方法。

 

薬との正しい付き合い方、

医療を確実なものにするために、

 

薬剤師にできることとはーー

 

【感想】

医師・看護師を題材にした医療マンガは数多くありますが、『薬剤師』マンガは珍しいですよね?

Twitterで1話目を読んだ時から気になっていて、ようやく買うことができました。

まず絵が上手で見やすく、ストーリーも難解なところがなく、とても読みやすかったです。

『医師の出す処方箋の6、7割は間違っていることがある』という事実にもびっくりしたし、それを是正する為に薬剤師さんがこんな風に奮闘しているとは、驚きと感動がありました。

 

主人公の葵みどりは若いこともあってとても熱心に仕事をしていますが、患者さんと無駄話が多いとみなす人もいるし、密かに期待している人もいて、リアリティがあって面白い。

働き方や性格は見る人によって評価が別れますし、一長一短ということも多いですよね。

 

子どもの治療の為に処方されたお薬を受け取る際、薬剤師さんのことを思い返すと、割と親身であったり質問をしてくれたり、量の多い薬を飲ませる際の工夫など考えてくれる人も居て、割と患者サイドの人が多かったのかなぁと思います。

 

2巻は春ごろに出るそう!

今日もお読みいただきありがとうございました。

 

 

既刊リンク

病院薬剤師vs薬局薬剤師!?普段知らない彼らの、熱すぎる仕事観を垣間見る第2巻!

 

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