Diversityの獲得――何を着て、どこで何をするは自分が決める。

2019-03-23

着たい服がある 2巻』 常喜 寝太郎(著)モーニングKC(講談社)

着たい服がある 2巻:あらすじ

「異なる他者」と分かり合えるか。

社会の中で生きづらさを感じる、あなたの物語。

 

「ロリータ」が、家族にバレた。

「ロリータを着ている時だけが本当の自分」というマミの言葉が、

静かに、鋭く、母の心を傷つける。

手に入れたはずの「自分らしさ」、だがそれによって壊れてしまった親子の絆。

 

人は、価値観の異なる他者をいかにして受け入れるべきか。

「多様性」が求められる現代社会で、「自分」と「家族」のあり方を問う、苦難と再生の第2巻。

(帯文、裏表紙より引用)

着たい服がある 2巻:みどころ

常喜 寝太郎:着たい服がある 2巻(講談社)

『私が知ってるマミは…本当のマミじゃなかったって言うの…?』

 

ロリータファッションに身を包んだ姿を、ストリートスナップに載せてもらったマミ。

それを見つけた妹は、母親に伝えると、

全然似合ってない

変なお店とかで働いてないか

 

マミの部屋にあった他のロリータ服も見つけて、ますます心配するお母さん。

否定してくるお母さんに対して、

『あの服着ている時だけが…本当の自分らしくいられる瞬間なの』

と、気持ちをこぼす。

 

好きな服を着ることで自分らしくいられる

その装い以外は=本当の自分じゃない?

 

20年間、ずっと一緒にいたお母さんは、この言葉に、涙を流す…。

 

常喜 寝太郎:着たい服がある 2巻(講談社)

『この服脱いだら私は私じゃなくなっちゃうわけ?』

 

母との揉め事を、尊敬する小澤さんに相談したかったマミ。

しかし彼はバイトを休みで…。

元気のないマミを、後輩が連れ出してくれたのはバー。

 

そこで出会ったのは、ゴスロリ服に身を包んだ一人の女性。

他のお客さんと揉める彼女を思わずなだめるマミは、

『服をバカにされるって自分自身をバカにされてるのと一緒でつらいですよね』

という風に話しかけたところ、

 

服は服

好きな服を着ていてもいなくても、自分は保てる

と反論されてしまう。

 

常喜 寝太郎:着たい服がある 2巻(講談社)

『勇気もない かわいくもない 他人の痛みもわからない ダメダメな女…ってことでいい?』

 

服をただの服とは思えないマミも反論!

大好きな服、ロリータは、

勇気をくれるし、

自分をかわいいと思えるし、

他人の痛みにも気付けるようになるし、

ロリータを着てる時だけが本当の自分だと主張。

 

ロリータを着てない時のあんたは、全部その真逆の女って認識するけどいい?

と、容赦なく切り返す、ゴスロリ娘のカヤ。

 

常喜 寝太郎:着たい服がある 2巻(講談社)

『服があんたなんじゃない あんたが服を着るんだよ』

 

言い合いをして気まずいままバーを退店したマミだけど…

どこか気がかりだったためお店に戻ってみると、マミを待っていたカヤの姿が。

 

カヤに連れられて行った先は、彼女の職場であるバー

そこでの彼女は、お客様一人一人に向き合い、その人自身を大切にする真摯な姿勢で仕事をしていた。

 

人は役割や肩書に自分を委ねていくと、だんだんどうやって生きていいか分からない瞬間がくる。

だからマミにも、洋服に自分らしさを委ねることのないように…と告げる。

 

ロリータ服を着ている時こそもっとも自分らしい、と思い込んでいると、それ以外の自分を否定したり、脱ぐのが怖くなってしまうかもしれない。

カヤはマミにそうなって欲しくなかった。

 

常喜 寝太郎:着たい服がある 2巻(講談社)

『私を…可愛い女の子として育ててくれてありがとう…』

 

マミと喧嘩して、出て行ってしまったお母さん。

お母さんのことが分からなくなってしまった姉妹は、両親が離婚したときの状況に似ている…と話す。

お母さんが見ていたアルバムを見返すマミは、可愛いものを身にまとい、コロコロと笑う様子で写真に撮られる自分の知らない自分を見つめた。

 

離婚した父親なら何か当時のことを知っているかも…と意を決して会いに行くと、

マミのために…と、女の子らしい、可愛らしいものを惜しげもなく与えてくれた彼の姿があった。

父がそうしてくれたから、自分の気持ちに素直になって生きられた時期を知ったマミは、おかげで幸せに生きてこられたし、これからも幸せになるよ、と告げる。

 

常喜 寝太郎:着たい服がある 2巻(講談社)

『好きなものは同じじゃない…それぞれ…違うひとりの人間なんだよね』

 

幼いころから可愛らしいものが好きな、本当の自分を知ったマミ。

そして、帰ってきたお母さん。

マミを理解するために、ロリータ服のお店に一緒に行って試着までするお母さんの姿に、マミも精一杯向き合う。

 

家族は心をひとつにしていなければならない

という思い込みを捨てて、

それぞれを尊重する

そんな風になっていけたら。

 

家族の答えとは…。

 

そして少しずつ芽生える小澤さんへの恋心、

カヤの秘めた想い、

 

苦しいけれど、

大好きな物があるっていいな。

 

着たい服がある 2巻:感想

1ヶ月早まって発売された2巻!

朝一で本屋さんへ行ったら新刊コーナーには陳列しておらず、ちょうど品出しされたばかりのものをゲットしました(`・ω・´)

掲載期間があるものの、「着たい服」はネットでも読めるので収録内容を知っていたりするんですが、やはり何度読んでも心にグッときます。

 

「自分らしさ」を維持しながら社会で馴染む、他者と分かり合う難しさに挑んでいる本作品は、その真摯な視点が本当に大好きです。

現実はもっともっと苦いし、漫画のように上手くは…と思うことも無きにしも非ずですが、それでも人生の苦さと甘さを兼ね揃えたこの作品の魅力は計り知れないものがあります。

一人一人の人生、感情を、丁寧に書き連ねている描写に感動します。

 

とくにカヤがとっても好き!

クールでローテンションながらも、真面目で丁寧な性格で面倒見もいい。

昔職場に見た目も中身もカヤにすごく似た人がいて、彼女のことが大好きだったので思い出してしまいます(`・ω・´)♡

 

3巻は5月23日発売予定とのこと。

 

今日もお読みいただきありがとうございました♪

既刊リンク

常喜 寝太郎

Identityという聖域――自分の気持ちを愛すること、偽らないこと、それは誰にも邪魔出来ない。

Replacementという呪縛――マミとカヤ、それぞれの恋心のゆくえ

 

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