Initiativeの堅持――自分の頭で考え、生きていくということ。
『着たい服がある 4巻』 常喜 寝太郎(著)モーニングKC(講談社)
着たい服がある 4巻:あらすじ
「ロリータ」を着た動画が、ネット上で意図せず拡散してしまったマミ。
さらにSNSはマミの人間性を勝手に決めつけたような書き込みまでもが。
そんな時、ファッションマガジン「KERA」から、思いもよらない依頼がマミに舞い込み……。
人はなぜ、他者を攻撃してしまうのか。
人はなぜ、自分自身のことすらよく分からないのに、他者を論評したがるのか。
現代社会の”病”を炙り出し、「主体的に生きる」ことの大切さを掘り下げる第4巻。
(4巻裏表紙より引用)
着たい服がある 4巻:みどころ
『ごめんなさい小林さん…大事になってしまって』
ボランティアで訪れた介護施設。
そこでのレクリエーションで発表したファッションショーが、動画としてネット上に拡散されていた!
利用者の家族が参加し、その子が投稿した模様…。
悪意はなかったものの、それを見た見知らぬ人びとが、思い思いにコメントを書き込む。
まるで、自分の行動を【採点】されているかのような不快感を覚えるマミ。
自分のことを、誰がどれだけ知っているというのだろう?
『あなたの”身の丈”はいつ誰が決めたんですか?』
以前ストリートスナップで声をかけてきてくれた、KERA編集部の近藤さん。
バズった動画の件でマミの胸中を言い当てつつ…
雑誌で紹介する、新作中華ロリータブランドの広告モデルになってくれないかとマミにアタックする!
春から小学校の先生になるただの一般人の自分に、そんな大役は身の丈に合ってない、
と即お断りをするが近藤さんは、
『マミの言うその”身の丈”は誰が決めた?』
『あなたのことをよく知りもしないネット上の人?』
と、自分の頭で考える意味を授ける。
そして、人は、背伸びをした時にこそ成長をする、と自らの矜持をマミに伝える。
大学卒業まで残り一ヶ月。
冬休みの間だけ、とある高校で運動部の指導に入らせてもらうマミ。
持ち前の真面目さと生徒のことを思って熱心に指導していくが、『いくら頑張ったって全国狙えるワケじゃなし、、』と、どうやら子どもたちとの温度差がある模様…?
とくに一番冷めていると言ってもいい、本堂という男の子、部活も勉強もそつなくこなす今どきな生徒に、偶然施設でのファッションショー動画を見られてしまう。
そして、少し関わっただけのマミに対して、心無い言葉をコメントしてしまう彼は、他人を批判することに慣れているし、躊躇もない様子。
『だけど私はロリータのおかげで 毎日が奇跡の連続です』
中華ロリータの広告モデルの仕事を受けることになったマミ。
一般人だし、何より臆病な自分のことを自覚してか、撮影&密着が始まってからもビクビクしていたマミだけど…。
ロリータを通じて得た素晴らしい経験、少しずつ積み重なった自信、自分という人間を知っていく過程によって、今回マミは新たな一歩を踏み進めることができたと気づき…
中国で降る季節外れの雪は、ただの異常気象として片付けられずに奇跡の象徴とされているそう。
そう解釈した方が、世界が鮮やかになるから。
そうした言い伝えのように、一見良くないことに見えがちな出来事が、自分の思い出を彩ったことは無いかと尋ねる近藤さんにマミは、『ロリータを身にまとったことこそが自分に奇跡をもたらした』と振り返る。
『そういう努力を積み重ねていくとね もっと自分が好きになれるよ』
マミのプライベートな一面を知ったクール男子、本堂くん。
のらりくらりと生きては真面目に取り組まない彼に、『何事ももう一歩頑張ってみようよ』と、声を掛けるマミ。
そんなマミに対して、バスケの技術を上げたところでプロになるわけじゃないし、無意味でしょうと返す彼だが…。
一生懸命にやることは無意味なんかじゃない
プロになるとかならないとかの話じゃない
今の自分よりも一歩踏み出すこと自体に大きな意味がある
と、マミなりの言葉で彼の心を揺さぶる。
本堂くんの、真剣に取り組みたくない(本気になりたくない)思いには何か裏がありそう…。
『昔の私は取り柄のない自分にコンプレックスがあって』
土曜のある朝、試合に向かう本堂くんが自宅のTVで目にしたのは、マミがモデルを務めた様子を密着取材した番組。
そこには、モデルに懸命に取り組む様子と、ロリータとの出会い、それを通じての人との出会いが自分を少しずつ変えていくきっかけになった。
と語る真摯なマミの姿があった。
ロリータ服に身を包んだことで嫌な思いも辛い思いも沢山した。
だけどそれでも自分の中にある思いを大切にした結果、家族とより絆が深まったり、友人が増えたり、世界を広げて来たマミ。
コンプレックスだらけだった過去の自分を乗り越えた彼女の言葉と表情は、同じような悩みを抱えた子どもたちの希望となるはず…。
そしてマミ自身も、そんな子どもたちを肯定してあげられる教師になりたい、と締めくくる。
『自分のために一歩踏み出すことの意味をわかってる人』
マミの影響を受けて、段々と変わっていく本堂くん。
本気になることが出来ないのは、身の丈をわきまえているから。
小学生の頃には気付いたという、【才能の有無】【優劣の差】。
なにか特別な力を持っているわけでもない自分が頑張ることは、ひどく虚しく、無意味に思えていた。
優秀な人のアラを見つけてはdisってけなし、自分のつまらない人生を直視しないようにしてきた。
それなのにマミは、
【普通】や【特別】、【誰かと比べてどうか】ということじゃなく、
自分のために、自分を好きになるために勇気を出すことができる凄い人
だと悟った。
匿名で好き勝手言っている人の言葉すら届かない次元にいる彼女…。
普通の人間だと分かっているからこそ、自分を好きになることから、昨日と違う自分になるために頑張りたい、、と冷めた心から本当の気持ちが溢れ出る本堂くん。
マミが自分や周りの人を大切にしようと奮闘するほど、
その熱が周囲に伝染していく…!
次回、いよいよ最終巻!!!
着たい服がある 4巻:感想
マミが困ったとき、困難に陥った時にいつも思い出されるのは【ロリータ】を通してのこと。
それだけ、小澤さんの言葉だったりカヤとの交流、家族の存在がマミを強くさせたんだろうなぁと感じる4巻でした。
肯定されてきたから勇気を持てるんじゃなくて、自分なりに行動した結果が積み重なっているからマミは強いんですよね。
根はとっても真面目で大人しくて優しいマミだけど、軸はもう鋼のように強いし、本当にいい先生になれそうです。
私は小学校のころは本を読んでばかりだったし、中学の頃は家庭の事情で精神的に不安定だったのでほとんど友達はいなかったし学校も苦手でした。
こんな風に肯定してくれる大人に当時出会いたかった。
心の奥底で、自分を好きになりたい、という思いがあるなら誰かを批判しないこと、勇気を出してみること、いつも力をくれる凄い作品です。
何となく映画に向いてそうな作品!
最終巻の発売は9月20日(金)!
あっという間で寂しいです( ;∀;)…。
今日もお読みいただき、ありがとうございました♪
いよいよ関東は梅雨明けしそうですね(*‘ω‘ *)
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