17歳のかけがえのない夏ーーそれぞれの錯綜する想い

2018-07-20

『恋は雨上がりのように 4巻』 眉月じゅん(著)ビッグコミックス(小学館)

【あらすじ】

ずっと一緒だった

親友・喜屋武とのすれ違う想い。

そして、店長がかつて描いた夢。

思春期の少女と思秋期のおじさん。

立ち止まったままの2人。

 

その想いの行方は…!?

今、17歳の夏が過ぎゆくーー

(裏表紙より引用)

 

【みどころ】

「迷惑なんかじゃない。むしろ、感謝しているんだ…」

 

夏風邪を引いたらしい近藤が心配で、家まで行ってしまったあきら。

 

「君が俺の何を知っているの」

と、踏み込んできたあきらを突き放してしまった近藤。

自分に自信がないからこそーーあきらの猛追が怖くて、心を閉ざしてしまったのかも?

あきらが素敵じゃないわけじゃなくて、むしろ魅力は感じている。

ただ、それに見合うような人間じゃないことは…自分が一番分かっている筈だから…。

 

「ばっ」

近藤の内面の吐露によって、

「嫌われていた訳じゃなかったんだ…」

と胸を撫で下ろすと同時に、泣きじゃくるあきら。

あきらに少しずつ惹かれる近藤…。

ただ、それを恋と呼べるのか、相応しいのか、そもそも恋なのか、

感情に名前をつける事が出来ない…。

 

だけど、彼女の抱える不安を取り除けたらーーと、無意識のうちに抱き締めてしまう。

ドキドキしてるあきらが可愛い!!!

 

「今の人の事、好きなの?」

 

近所でやる夏祭りに、中学からの友達、はるかを誘ったあきら。

部活以外で遊ぶのは初めてみたい。

ギクシャクしていた二人に笑顔が戻るかと思いきや…

 

あきらが店長(近藤)に声をかけてしまい、それを見られて心配され…

あきらの見たことのない顔に、どういうことなのか詰め寄られる始末_(:3 」∠)_

年齢が明らかに父親世代で、子どもも連れてたらそりゃ友達は心配するよね。

 

その所為か、「何を考えているのか分からないし、聞きにくい空気を出している」と文句を言われ、再びというか今まで以上に距離が出来てしまう二人。

どうして上手くいかないんだろう。

あきらが怪我で躓いてからの二人は、どこかすれ違ってしまう。

 

そして、

「もう、元には戻れない」

そう呟いてしまうあきら…。

 

「よう。」

 

初登場!

近藤の大学からの友達の、九条ちひろ。

同い年に見えないくらい若いな…笑

近藤がかつて図書館で借りた本はちひろの本だった。

そこから連絡を取り合い、10年ぶりに会う二人。

10年の間にちひろは作家デビューし、近藤は結婚と離婚をし、今の地位に至る。

 

「俺たちは大人じゃねーよ。同級生だろ。」

 

何となく気まずくなったまま会っていなかった近藤とちひろ。

会えるようになったのは、歳を重ねたから…と近藤は思っていたけど。

それもあるかも知れないけど、空白の期間を埋めることが出来るだけの、幸せだった頃の思い出がもともとあったから、引き寄せあったのかも知れない。

お互いのことが好きで、良いところも悪いところも知っていて、気まずくなったことがあったとしても…それでもつるむことができる、それが本当の友達。

 

はるかとのことで落ち込むあきらに、自身の体験を話す近藤。

今は上手くいかなくても、かけがえのない時間を過ごしたことには違いない。

だからいつかまた、時が満ちるまで…。

満月の夜に、願いをこめてーー

というところで、4巻は終了。

 

切ないエピソード多めの4巻、友達付き合いって難しい、、

 

【感想】

突き放したはずのあきらを、魅力的だという近藤。

ロマンチストなのか、彼女の持つ若さゆえの熱さが、かつて自分が無くした想いを呼び起こすという。

いろんなことを乗り越えるうち、、歳を重ねるうちに強くなる反面

心の順応もだんだん鈍くなってしまうので、あきらの熱さ、まぶしさ、ひたむきさは、確かに大人にはまばゆい。

感受性の高さは無くしたくないけど、鈍くなる方が傷つかなくて済むのもあるんだよね。

大人になるとどうしても、傷付かなくて済むように立ち回ってしまう。

近藤はかつての友との仲を取り戻し、あきらは友との距離が出来てしまう…。

それぞれの行方は…。

 

 

既刊リンク

眉月じゅん

大人になる程に増す防御力ーー打ち破れるのは彼女が若いから

望みがなくとも、報われなくとも、想いは曲げない。ーー季節は秋へ

 

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