燃え尽き奪い尽くされた、家族の逆襲が始まる―御手洗家、炎上する1巻

2018-11-18

『御手洗家、炎上する 1巻』藤沢 もやし(著)KC KISS(講談社)

【あらすじ】

代々病院を経営する御手洗家が全焼するという不幸な事件があった

原因は妻の火の不始末とされ彼女は燃えさかる家の前で土下座して謝罪した。

13年後、村田杏子は家事代行として御手洗家に勤務となる。

出迎えたのは後妻の真希子。

厳しい基準を課されたが杏子は契約までこぎるける。

しかし、彼女が御手洗家に潜入したことには真の目的があったーー。

期待の新鋭が挑む、ある一家の火事から始まる本格ホームサスペンス!

(この本の情報 より引用)

 

家事代行に扮して…

藤沢 もやし:御手洗家、炎上する 1巻(講談社)

『職業 家事代行』

 

東京の北西部、木造アパートに住む、山内しずか

妹と二人暮らしで、マザーズサービスという家事代行業に従事している。

歳は25歳で、両親とは離れて暮らす。

 

藤沢 もやし:御手洗家、炎上する 1巻(講談社)

『わかるわよね?』

 

しずかが派遣されてやってきたのは、御手洗家

13年前、この家では謎の不審火があり家屋は全焼した。

妻の火の不始末との説もあり、離婚。

後妻としてやってきた嫁は真希子

御手洗家は代々医師の家系で、診療所の隣に建つ戸建て・居住スペースを掃除して欲しいと頼んできたのだ。

 

真希子は今、主婦向け雑誌の読者モデルをしており、SNSを使ってそのステキな暮らしぶりを発信し、モデルの地位を盤石なものにしたいと目論んでいる。

そのためには、“自分の人生(仕事や家事)が人から羨ましがられるくらい、ちゃんとしていて、なおかつ見栄えの良いものでなければ”と考え、家事代行を依頼している。

 

もちろん、そんなこと(実際は家事を依頼しているという事実)は周りに知られてはならず、しずかに対しても他言しないか最初から強く警戒している。

 

藤沢 もやし:御手洗家、炎上する 1巻(講談社)

『13年前の名前は御手洗杏子』

 

真希子の家事代行の指示は、

  • 生活感を完全に無くした美しさ
  • モデルルームのようにすること
  • 2階には絶対に上がらないこと
  • 宅配には出ないこと
  • 家のものは盗らないこと

 

初めからしずかを信用する気など無い真希子。

厳しい目を投げ掛ける彼女を納得させるだけの仕事をやってのけるしずかは、この家での契約を無事にゲットする。

しずは偽名で本名は杏子(あんず)。

現在の苗字は村田だけれど、本当は御手洗

御手洗杏子は、全焼した家・御手洗家の長女だったのだ。

 

藤沢 もやし:御手洗家、炎上する 1巻(講談社)

『私はどうしても好きになれなかった』

 

真希子はかつて母の友人だった。

 

真希子は男の子二人のお母さんで、下の子と杏子が同い年なことから母同士で仲良くなった。

杏子の母は体が弱くあまり外には出られなかったため、

自分と同い年で、子どもの年齢も同じというつながりを持つ真希子の存在がとても嬉しかった。

 

しかし杏子には、“ただの友人”とは到底思えない異様さを真希子から感じ取り、

幼心にも彼女を受け入れることは出来なかった…。

 

渡 真希子から、御手洗 真希子になったと知った時、

すべてが手遅れになっていた。

 

藤沢 もやし:御手洗家、炎上する 1巻(講談社)

『2階には上がらないで』

 

家事代行とはいえ、リビングや客間の清掃ばかりで、プライベートな空間には立ち寄れない杏子。

 

さらに深くかかわるきっかけを持てないか…と思案した際に、

妹の柚子から、『一番の得意分野である料理は?』と言われ、

料理で真希子に少しでも心を開いて欲しい&余った時間で2階部分の清掃も引き受けると申し出るも、真希子は頑なに拒否。

遠慮よりは拒絶に近いような感覚を覚える杏子…。

 

藤沢 もやし:御手洗家、炎上する 1巻(講談社)

『あの家事がお母さんのせいじゃないって証拠が』

 

2階部分の清掃の代わりに、物置の資源ゴミを纏めるように頼まれる杏子。

そこはほとんどゴミ置場だという真希子、

そのゴミ置場に置かれていた、

かつて母の持ち物であったパンプスを見つける。

最初に掃除をした時に見つけたのはガラスのバレッタ。

友人だった頃、真希子が家に来るたびに持ち物が無くなって困っていた母の姿を思い出すーー。

 

杏子があの家に執着する理由は、13年前の家事の真相を突き止めるため。

 

離婚後母は、女手一つで子どもを育て食わせるために奮闘し、やがて長期にわたるストレスから、記憶喪失となり入院している。

杏子のことさえ分からない母

いつかすべてを思い出したとき、悲しい記憶を塗り替えるため、杏子は火事の真相を探るーー。

 

藤沢 もやし:御手洗家、炎上する 1巻(講談社)

『母の人生を 別の人間が歩いていた』

 

真希子のSNSチェックに余念がない杏子。

見れば見れば見るほど…

 

母が生きていた人生、

母が生きる筈だった人生、

火事で縁を切り離されたばかりでなく、

家も、物も、父親さえ…母の持ち物をすべて奪い、人生そのものを奪われていたと実感する。

 

家事以降母同士の友情も壊れたことになるのかな?

杏子の母は、真希子を疑いはしなかったのだろうか…。

そして父(夫)も周囲の人間も、懇意にしていた人間がこの家の嫁として君臨することに疑惑を抱かないのか疑問。

杏子の、『そんな人間の人生が賞賛(いいね)されてたまるか』て台詞現代的でいいなぁ。

 

藤沢 もやし:御手洗家、炎上する 1巻(講談社)

『ーーーえ…?』

 

家事を早く的確に終わらせる術を身に付けた杏子。

真希子が帰る約束の時間の前に、

ついに2階へ侵入する。

 

何がなんでも火事の手がかりが欲しい杏子、

奥から順にドアを開けるはずが、

音楽の鳴る部屋を開けるとそこには、

物が多く散乱した部屋を見つける。

 

その部屋の住人と思しき者との邂逅ーーー。

 

 

人が居るとは思っていなかった杏子、

どうなる!?

 

【感想】

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藤沢もやしさんといえばKISSで連載されていた『17歳の塔』しか知らないのですが、女子の熾烈なヒエラルキー争いがとっても面白かったので、今回の作品も読んでみました。

 

かつて自分たちが住んでいた家が燃えてしまい、家系からも簡単に切り離されてしまった杏子たち。

13年後、ふたたび御手洗家を自然な理由で訪れ『火事の真実』を探るべく知略を巡らせ攻防する様は、想像以上にハラハラできて面白かった!

真希子が母から盗んだとされるバレッタやパンプスを取り戻したりそれがタイトルになっていたりと…杏子が御手洗家に隙がないか探っていく様はドキドキしました。

 

ことのあらましがサクッと語られ現在の物語が始まっているので、

  • 13年前の家事について
  • そこからの夫婦関係
  • そして杏子たち村田家のお話

などをもう少し知りたかったかな…今後語られるのでしょうか?

 

なんとか潜り込んだ杏子ですが、大きいお家で一度家事にも遭っていることから、不審火や防犯に対しての性能を高めていそうという懸念もあり、杏子があんまり不用意な動きをしたら補足されていそうな気はしますが笑

 

2階に上がるなと言われていたのに上がってしまい、さらにそこの“住人”にも遭遇してしまった杏子。

その窮地さえ自分が優位な様に出来ないかと思案&行動する杏子が逞しくてカッコいい。

復讐の未亡人の密のように、知略を巡らせる、抜かりなく生きる女性が最近好きです笑

いつもぼーっと生きている私にとっては、とても素敵な存在…。

まあそうなるに至った背景が密にも杏子にもあるので、悲しい防衛反応とも言えますが…。

恋愛モノを読みがちですが、サスペンスもハラハラして面白いですね!

 

今日もお読みいただきありがとうございました(`・ω・´)

 

 

既刊リンク

藤沢 もやし

知略と思惑、交差する心理戦――真犯人をめぐる闘い

 

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