選手生命を絶たれた寛と、自暴自棄に生きるかなえの衝突が向かう先―君に愛されて痛かった5巻
『君に愛されて痛かった 5巻』知るかバカうどん(著)BUNCH COMICS(新潮社)
君に愛されて痛かった 5巻:あらすじ
自分に優しくしてくれる寛が他人に貶められるのが嫌。
かなえはその気持ちを寛に伝えるが、受け入れられず喧嘩別れしてしまう。
このことをきっかけに自分と寛の”普通”が違うことに気付き、気持ちが不安定になったかなえは、援助交際で心を満たそうとするがーー。
(この本の情報 より引用)
君に愛されて痛かった:これまでのお話
トラウマを抱え、援助交際で承認欲求を満たしていた女子高生・かなえ。
家庭に居場所はないが、学校では自身へのいじめを 主導したクラスメイト・一花を失脚させ、グループに復帰、笑顔を取り戻していく。
一方で、グループ内では序列の変化により、少しずつ歪みが生じる。
他校の高校球児・寛に惹かれ、執着心を強めていくかなえ。
初めて湧き上がる感情にときめきと戸惑いを覚えるも、不安に揺れる心をいつも聞いてくれた鳴海はもういない。
そんなとき、寛の元カノに遭遇。
ついに感情が決壊しーーー。
(4巻Story より引用)
ごめんね
あのね今日ねわたし…
すごい楽しみだったの
とみ子ちゃんと出かけるの
楽しみにしてたの…
なのに楽しくできなくて…
ごめんね…
引用元:君に愛されて痛かった5巻
寛に呼ばれて見に行った、他校との試合。
かなえととみ子、そして現地でデビルくんと合流し試合観戦をしますが、、、
調子の悪そうな寛にヤジを飛ばす連中や、見限るファンの姿を見て、自分の大切な人が貶められることに我慢ならない様子のかなえ。
機嫌の悪くなってしまったかなえに、デビルくんが帰り際お水をくれますがそれも無視、、、
さすがにそんな態度をとみ子から叱られ、ようやく自分の間違いに気づき、デビルくんに謝罪するかなえは、今日という日を台無しにしてしまったこともとみ子に謝罪します。
男同士の付き合いで言葉が乱暴になることや、冗談、言葉のあやがことごとく通じない雰囲気を醸し出すかなえですが、とみ子はあまり気に留めていない様子。
それよかむしろ、今日のことを悪いと思ってるなら、次は豪華なかき氷奢ってよね!ということでチャラにしてくれます。
ちょいちょい出てくるとみ子の優しい面好き。
周りに合わせたキャラ演じてるだけで実はいい子なんよね…
かなえと解散後、ストレス食いしがちなとみ子もこの日ばかりは気分が良くなったのか、ミニサラダでお腹を満たそうとしたところで、分裂した元友人・里虹(りこ)から鬼電がかかってきてーーー
とみ子とかなえの仲も、これによってまた引き裂かれてしまいそうな予感。
なんとなくだけどとみ子が苦しい決断を迫られそうな展開になりそうな…うーん。
里虹こわい。
逆境
この俺が…
投手じゃなくなる?
ありえねェだろ 絶対
誰もが負けると思った試合でも 俺は
何十試合も何百試合も 逆境を乗り越えてきたんだ
俺は!!!
引用元:君に愛されて痛かった5巻
彼に暴行を受けた寛は肩腱板損傷(けんけんばんそんしょう)してしまいます。
診察した医師から、
『野球を続けることは差し支えないだろうが 投手としてプレーすることは賛成しかねるね』
と言われ、まぁ、イコール、野手に転向することをそれとなく伝えられます。
長年投手として数字を操り、逆境を乗り越えてきた自負のある寛にとって、当然受け入れがたい状況で、、
あの夏の試合以降治療に専念すべく自粛生活に入りますが、毎日モヤモヤしたりパワプロをしてみたり、野球からそう簡単に離れられない状況に(そらそーや
そして3年生が部活から離れ、新キャプテンに越智が就任します。
気分転換に外へと出た寛はかなえに声をかけ、二人は会うことに。
アイスを分け合って食べるさなかーー
かなえは、越智に待ち伏せされたこと、そして寛の肩のケガ、今後の接触を拒まれたことを明かします。
寛が全力を注いで取り組む野球、越智が必死になる野球、良さが分からないかなえは思ったことをそのまま、
『自分を犠牲にしてまで続けることなの?』
『それってしなきゃいけないことなの?』
っと言ってしまい、それを聞いた寛は当然激昂…!!
寛の様子に戸惑いながらも感情を表明するかなえは、
私なんかの事 優しくしてくれる寛君が
みんなの訳わかンない価値観で
ぐちゃぐちゃにされるのが嫌なの…!
引用元:君に愛されて痛かった5巻
一生懸命に説明しますが、それでも理解されないかなえの感情。
家族でさえ違うのに、友達(かなえと寛)の気持ちが一致するはずがないと吐き捨て、、
その場から去ってしまう寛。
その言葉と態度に、
自分にとっての特別が寛にとっては通常で
自分にとっての普通が寛にとっての異常
であることに気付いてしまったかなえは、、、
渇望
努力すれば普通になれるって
期待しちゃったよ
私が普通になれてたら
普通の人に
私じゃない私になれてたら
引用元:君に愛されて痛かった5巻
自分の感情を理解されなかったこと、
『どうでもいい』
と言われたことで、自分と他人(自分以外の人間、寛もここに含まれる)の考えが違うことを痛感したかなえは、感情が荒れて不安定になってしまいます。
お母さんとの不仲も極まり、ついに家出、、、出会い系で知り合った相手とホテルに行き、ホテル暮らしをするように。
その相手から言われた言葉でまた、自分がまともでない(と、思い込み過ぎてるだけなんだけど…)と感じ取り、荒れてしまう負のループに。
そんなかなえの様子に、一泊すると言った相手も万札渡して逃げ出すくらい、かなえは心の均衡を失いまくるというね。
決別
奢り高ぶるな
そんなに自分本位にやりたきゃ
個人競技してろよ
引用元:君に愛されて痛かった5巻
かなえと分かれた寛は、越智に出会います。
治療に専念する時期に外でふらつく(ように見えている)寛に激昂しますが、越智のおばあちゃんが間に入ることでゆっくり話す機会を得ます。
しかし、ケガを重く受け止めていない様子の寛に我慢がならない越智は、殴って言う事を聞かせようとしたり、二人の意見は衝突、、
しかも夏の大会が原因で予算が底をつき、外部コーチが契約解除されたことを聞かされ、いよいよ今まで通りの野球が出来ないことを悟った寛と、身勝手な寛に愛想が尽きた様子の越智。
長年バッテリーを組んで来た二人ですが、かなえの登場と不測の事態(ケガ)により、その仲にもいよいよ亀裂が入る予感…。
そして家出を続けるかなえを見つけた寛は、なんとかまともな生活に彼女を戻そうとしますが、2人もやはり衝突してしまいます。
かなえの本音、
寛の本音、
二つがぶつかり合う先にあるのはーーー。
君に愛されて痛かった 5巻:感想
3年ぶりの新刊!
続きが出るというのは喜ばしい限りですね。
さてさて5巻は、それぞれが色々な葛藤を抱えてもがき苦しむ様子が存分に描かれていました。
ダークな青春という感じで、読んでいて非常に面白かったです。
思い込みや偏見、無慈悲な感情が、若さの証拠だなぁという感じで、それぞれの向かう先が怖くも楽しくも感じました。
思うにかなえは発達障害という感じで、経験していないこと、想像が及ばないことへの理解が著しく乏しいのかなと。
それはおいおい補っていけたり、出来ないことは出来ないと割り切るしかないんだけど、今は、
自分がまともじゃない
ということに必要以上に過敏になっている気がしました。
出生なのか生い立ちなのか、そういうところにコンプレックスがある感じ。
かなえの不安定さはお母さんとの仲からも来ているとは思うのですが、そこまでキーとなる人物と描かれていない(教育圧力が凄いだけで醜悪さはない)ので、どこか別の所にあるのかな、とも思っています。
かなえのコンプレックスの元はどこから…?
6巻が出るのも3年後くらいでしょうか?
次も気長に待とうと思います。
更新が遅くなって申し訳ありませんでした。
お読みいただき、ありがとうございました。
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