再始動の刻ーーあきらの想いのゆくえ
『恋は雨上がりのように 10巻』 眉月じゅん(著)ビッグコミックス(小学館)
【あらすじ】
ガーデンで過ごした大晦日から年が明け大雪の元旦。
部屋で一人黙々とペンを走らせる店長。
編み上げたマフラーを下げ
あきらは傘をさし、家を発つ。
『きっと、すぐやみますよ。』
あの出会いの日から季節はめぐり、
二人が雨上がりの空に描くのはーーー
(裏表紙より引用)
【みどころ】
『普段言えないような言葉を口にしそうになるのは。』
年明けに、近藤宅を訪れたあきら。
手編みのマフラーが完成したので、誕生日プレゼントに渡しにきたのだった。
大雪の、一度はすれ違う二人だったけれど、ほどなくして再会。
家に招き入れる近藤は、ここ最近ずっと小説を書き始めていることをあきらに告げる。
楽しそうにしている彼を見ては寂しい気持ちになっていた理由に合点がいくあきら。
コーヒーを淹れてもらい、雪の日特別バージョンの手品を見せてもらったあきらが見せるキラキラとした綺麗な笑顔に、
封じ込んでいる筈の言葉がつい出そうになるのを止める。
近藤があきらと同じ年になって、もし同じ環境にいたら?
という世界線のIF
運動系のあきらと文科系の近藤の接点を見つけることは難しいように思うけれど、ちょっとしたきっかけで絡むことに。
『もし俺と橘さんが同級生だったとしたら』
『会話すらままならない関係だったかも知れない』
そう思うと、今の年齢と立場で出会った方がまだ良かったかも?
…なんて。
『雨の日も…たまには悪くないなって…思うよ。』
もし二人が~のIFをあきらサイドでも妄想していたらしい笑
月2回発行の学年新聞を執筆する近藤と、部活紹介に使う写真を渡すあきら。
雨で部活が休みなったので、図書館で束の間の時間を過ごす二人。
あきらだけが感じている空気が可愛いなぁ
『かつては自分もそんな世界で生きていたはずなのに。』
改めてマフラーに触れる近藤。
手編みと聞いて、感動と驚きと疑問(?)を隠せない彼に、
『ちゃんとこの手で編みました!』と強調して手のひらを見せるあきら。
この手でかつて加瀬を殴っていたことが気がかりだった近藤は理由を尋ねるが、
『どうしても許せないことがあったからああなった』
と伝えるのみ。
あきらのその、
感情が大きく揺れ動き躍動するように生きる姿に、
純度の高さを感じる近藤。
人は懸命に生きる方法を段々と忘れて行ってしまうのかも知れない。
『このまま 部屋に戻ってはいけない。』
暗くなる前に帰そうとする近藤。
その前に駅近くの神社でお詣りをする二人。
大雪で電車は運転見合わせ。
あきらは喜んで、
店長の家に戻ろうと告げるが…
近藤の胸中は…
彼女を愛しているからこそ、自分のものにしてはいけないと悟ったのかも知れない。
『走りたい…!』
家まで送ると告げた車に乗ろうとしないあきら。
別れの時間が来て欲しくないと言いたげな背中をして…。
そんなあきらに、
『俺が君にしてあげられることはもう何もない』
と突き放す近藤。
初めての拒絶にショックを受けるあきらだが近藤が続けた、
『君にも、待たせたままの季節の続きがあるんじゃないのか』
と尋ねる。
脚を故障して離れた陸上。
あきらの本心はきっとずっと、
『走りたい』
と思っていたのかも知れない。
ついに、向き合うときが来た。
ーーーー
そして恋のゆくえはーーー
【感想】
ついに最終巻!
大好きな作品だったので、終わってしまったのが本当に寂しいです( ;∀;)
人生に立ち止まった二人が惹かれ合い、僅かな時を過ごしたというだけでどうしてこんなに切なく、美しいのか。
コミックも、アニメも何度も何度も読み返してしまいます。
映画はまだ観ていないんですが、もうそろそろ手を出してしまいそうです(ずっと恋雨ロス)。
賛否両論ある終わり方のようですが、私はこれで納得しています。
リアリティに限りなく近いファンタジーが好きなので…。
さよならデイジーも読みたい!初期作品および短編だそうなので、恋雨とはだいぶ毛色も違うようです。
今日もお読みいただきありがとうございました!
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